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更新日:2025.10.15

目次
デジタルマーケティングの世界はここ数年で大きく変化し、広告の「配信・計測・分析」をどう設計するかが成果を左右する時代になりました。
複数の広告媒体をまたいでキャンペーンを実施する企業も増える中で、「どの広告がどれだけ効果を出しているのか」「媒体ごとの成果をどう統一的に評価すべきか」といった課題を感じているマーケターの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、2025年最新版の仕様変更や新機能を踏まえ、CM360 の基本構造から主要機能、分析・活用のコツまでを、現場目線でわかりやすく解説します。最新の計測方式変更(begin-to-render 方式への移行)やリーチ指標の強化など、今まさに押さえておきたいポイントも盛り込みました。
これから広告運用の高度化やデータ活用を進めたい方にとって、CM360 が「単なる広告ツール」ではなく、「マーケティング基盤」としてどのように機能するのか。その全体像を、この記事で一緒に整理していきましょう。

執筆:檜田詩菜(過去のインタビューはこちら)
コクーのマーケティング担当。鹿児島県出身。数年前まで美容コスメ・雑誌・不動産・IT業界の顧客マーケティングを担当。サスペンスLOVE。
まずは、Google キャンペーンマネージャー360(Campaign Manager 360/以下 CM360) がどんなツールなのかを、改めて整理しておきましょう。
Google キャンペーンマネージャー 360(以下、CM360) は、一言でいえば 「広告の成果を正しく測るための司令塔」 です。
多くの企業が広告を出す際、検索・SNS・YouTube・ディスプレイなど、複数の媒体を並行して活用しています。
しかし、それぞれの媒体で管理画面や指標がバラバラだと、「結局どの広告が一番効果的だったのか?」「広告費をどこに集中させるべきか?」といった判断が難しくなります。
そこで登場するのが CM360。
Google Marketing Platform(GMP)の中核ツールとして、各媒体に配信される広告の配信結果・クリック数・コンバージョン(成果)を一元的に計測・分析できます。
CM360を導入することで、企業は広告データをバラバラの点ではなくつながった線として扱えるようになります。
主な価値は次の3つです。
広告の重複や到達範囲を可視化できる
どの広告が同じユーザーに何度も配信されているかを分析し、リーチの無駄を削減。
媒体ごとの効果を比較できる
Google 広告、YouTube、SNS、外部ディスプレイなどを横断的に評価し、投資配分を最適化。
経営判断に使えるデータを提供する
費用対効果(ROAS)や顧客獲得単価(CPA)など、経営層が重視するKPIを精度高く算出。
CM360は単独で使うだけでなく、Googleの他ツールと組み合わせることでさらに効果を発揮します。
GA4(Google アナリティクス4)
広告からサイト訪問・購入までを一気通貫で可視化。
DV360(Display & Video 360)
広告の配信設定や入札を担うツール。
CM360と連携すると、広告配信→成果測定→最適化がスムーズに。
Search Ads 360(SA360)
検索広告のデータを統合し、他媒体と同じ基準で評価可能。
Cookieの制限やプライバシー保護の強化により「広告の成果を正確に測る」ことが難しくなってきています。
また、媒体ごとのレポートをまとめる手間が減り、「数字の整理に追われるより、改善に時間を使える」環境を作れるのも大きな魅力です。
CM360の導入を考えるときに、チェックしておきたいポイントは次の3つです。
広告媒体が複数あるかどうか
SNS・動画・ディスプレイなど複数チャネルを運用しているなら、CM360による一元管理の効果が大きいです。
成果データをチームで共有したいか
社内や代理店、制作会社など、複数メンバーで広告を動かしている場合、CM360のレポート機能が情報共有をスムーズにします。
今後、広告運用を“見える化”したいか
感覚や経験に頼らず、数字に基づいて判断したい企業には最適。
将来的にBIツールやGA4と連携して拡張も可能です。
CM360は、広告運用担当者だけでなく、「マーケティングの仕組みをもう少し理解したい」という人にもおすすめのツールです。
2025年の最新アップデートでは計測の精度や分析指標がさらに強化されており、広告の費用対効果を見える化する仕組みとして、今後も重要な役割を担っていくでしょう。
多くの広告技術が変わる中で、CM360 も例外ではありません。
2025年段階で押さえておくべき最新の仕様変更・注意点を以下にまとめます。

これらの変更は、すべての広告主や代理店に即時影響するわけではありませんが、運用・比較・レポート自動化において「意図しないズレ」が出るリスクがあります。
2025年段階では特に インプレッション計測方式の変更 が最も大きな波になると予想されます。
2025年9月から、CM360(Campaign Manager 360)における ディスプレイ広告のインプレッション計測方式 が変更されます。これは「広告が画面に見える形で開始表示できた時点(Begin-to-Render)」を基準に計上する方式です。
ポイントと注意点:
これまでの「広告のダウンロード開始時点(on-download)」での計測とは異なり、一部のインプレッション数が目減りする可能性があります。
既存の広告運用基準や目標値をそのまま比較すると、見かけ上パフォーマンスが落ちたように見えるリスクあり。
レポート比較時には「計測方式が変わった時点での補正」や「仕様改定後/前の切り分け表示」ができるようにしておくと安全。
2025年には、リーチ効率を定量的に捉えるための指標強化も行われています。
特に Cost per Reach(コスト ÷ 到達ユーザー数) の追加などが挙げられます。
注意すべき点:
従来「インプレッション数/クリック数中心」の評価から、「どれだけの人に届いたか」の視点が重視されます。
周波数管理(Frequency Cap:1人あたり何回まで広告を見せるか)による “Savings from Frequency Cap”(キャップ適用によるコスト削減効果) 指標の導入も。
新旧指標の乖離が出やすくなるため、KPI定義やレポート設計を改めて見直す必要があります。
2025年9月から、Floodlight アクティビティ(変換タグ)が Web と App(アプリ) の変換ストリームを分けて扱う仕様 に移行予定です
影響と対応:
既存の GA4(または他の計測ツール)との連携設計によっては、Web・App の変換が混在していた部分の仕様調整が必要になる可能性。
新しくリンクされた Google Analytics プロパティは、この新仕様が適用されるため、設計段階から Web/App 分離を意識した設計を。
古いプロパティでは、従来のように Web + App をまとめて扱う方式も当面は残りますが、将来的には分離仕様に統一される可能性があります。
2025年9月以降、EU(欧州連合)向けに広告を出す企業は、すべてのキャンペーンで政治広告かどうかを自己申告しなければなりません。自己申告が “Yes(政治広告)” とされたキャンペーンは、EU 内での配信がブロックされる可能性もあります。
注意点:
広告主の業種にかかわらず、EU 向け配信を行うなら必ず自己申告を。
宣伝内容が政治的・公共性を帯びる可能性があるもの(選挙関連、政策への言及など)は要注意。
API や SDF(構造化データファイル)経由で入稿する際も、自己申告フラグが必須フィールドになります。
2025年9月以降、SDF(構造化データファイル)を使った入稿時の仕様にも更新があります。
自動推定ドメイン(Conversion Domain)の扱いに関する設定が必須となる見込みです。
チェックポイント:
SDF テンプレートに新しいカラム「Conversion domains are manually overridden(ドメインを手動上書きするか否か)」が追加されます。これを付けずに従来テンプレートを使うとエラーになる可能性。
これまで自動推定ドメインに頼っていた運用では、明示的に設定し直す必要が出てきます。
SDF 入稿を多用するチームは、テンプレート更新と検証の準備を早めに。
CM360 API のバージョンアップおよび非推奨化の動きも進んでいます。
リスク&対応:
古い API バージョンやフィールドが廃止されると、自動取得スクリプトや外部システムとの連携が動かなくなる可能性あり。
Google は API の非推奨化(Deprecation)を予告して、一定期間猶予を与える運用をしています。
レポート設計やスクリプトは、最新バージョン対応を前提に保守性を考慮しておくこと。
広告業界全体の流れとして、サードパーティ Cookie によるトラッキング制限やプライバシー保護の強化が進んでいます。CM360 も例外ではありません。
注意点:
従来の Cookie ベースのリターゲティングや行動追跡が使いにくくなる局面あり。
プライバシー準拠型の代替計測(モデリング / モデル推定 / シグナルベース手法)を導入する余地を持たせておくこと。
データ取得許可(Consent / 同意)設計をしっかり整えておく必要があります。
ここからは、「広告を配信し」「効果を測定し」「改善に活かす」までの流れを、主要機能に沿って解説します。
Trafficking は、CM360 の広告配信設定を行う中心機能です。以下の要素を設計・管理します。
アカウント / 広告主(Advertiser)構造
複数の広告主を扱う代理店型運用では、Advertiser レベル・ AdvertiserGroup(グループ化)レベルの構造設計が重要。
キャンペーン > 配置(Placement) > 広告(Ad) > クリエイティブ(Creative)構成
クリエイティブをどの配置に流すか、回転設定や優先度、開始/終了スケジュールの設定を行う。
ターゲティング・セグメント設定
地域、デバイス、媒体カテゴリ、インタレスト、カスタムセグメントなど。
タグ設定(Floodlight タグ含む)
クリック計測、インプレッション計測、カスタム変数(eVar 相当)などを設計。
入稿バルク/SDF(Structured Data File)
大量運用ではインターフェースでの設定より、SDF 等のファイル管理が効率的。
運用現場では、Trafficking 設定の取り回しや、設定ミス(対象除外、クリエイティブ不一致、ターゲティングバラツキなど)がトラブルの温床になりがち。
最適化ルールとチェック体制を整えることが肝要です。
広告効果を正しく測るための鍵が、この Floodlight 設計です。
Floodlight Configuration(設定単位)
広告主ごとの計測設定群
Floodlight Activity(個別計測アクション)
購入完了 / お問い合わせ / 登録 など、ユーザーアクションを個別に定義
Lookback Window(遡及期間)設定
広告接触から最後のクリック/インプレッションまで何日遡るか
カスタム変数 / カスタム計測
属性変数、eVar 相当の補助指標
最近は Web と App の変換ストリーム分離、新 API フィールド変更など、計測タグの扱いに注意すべき仕様変更もあります。
特に、Web/App の変換を分けたい場合は設計段階で考慮を。
CM360 の強みは、広告配信データを直接分析・レポートできる点です。
使いこなしたい主要機能とポイントは以下です。
既存レポートテンプレート / カスタムレポート
指標選定、フィルタリング、セグメント分割などを駆使して、ダッシュボード構成を最適化
アトリビューションモデル比較
最後クリック/線形/時間減衰/位置ベースなど
リーチ分析/頻度分析
ユニークな視聴者数、頻度カウント、重複排除指標
加重指標/コスト効率指標(CPR, CPReach 等)
2025年にはリーチ効率に重きを置いた指標が強化
レポート API/自動取得
外部 BI ツール、スプレッドシート、Looker などとの連携
比較期間/基準変動の注意
仕様変更(計測方式・指標定義変更など)をまたぐ比較は慎重に
CM360 単体だけで完結する稼働は少なく、他ツールとの統合が鍵になります。
GA4 との連携
広告 → サイト行動 → コンバージョンの流れをシームレスにつなぐ
DV360 や Search Ads 360、YouTube 広告とのデータ同期
外部 BI / DWH / クラウド分析基盤との接続
(例:BigQuery、Looker、Cortex)
クロスメディア統合分析
オンライン広告 + オフライン(実店舗、テレビなど)の統合的なメディア効果分析
特に、大規模案件や複数チャネルを横断するケースでは、CM360 を「広告データのハブ」として機能させ、運用・分析体制の基盤に据える設計が重要です。
CM360 を現場で使うなら、以下のような “失敗しやすいポイント” をあらかじめ注意しておくと安全です。
特に 2025年9月のインプレッション計測方式変更や指標定義変更などをまたぐ期間は、前後比較が混乱しやすい。基準変換対応・補正方法を用意しておく。
API バージョン変更やフィールドの廃止により、自動取得スクリプトが動かなくなる可能性あり。
定期メンテナンス体制を。
配置漏れ、ターゲティング重複、タグ設置ミスなど小さな設定のズレが大きな効果ロスを生む。
Trafficking 設定のチェックリストを持つこと。
従来のインプレッション数/クリック数重視から、リーチあたりのコスト効率に評価軸がシフトしつつある。
特に新しい “Cost per Reach” 指標などを活用。
仕様変更が比較的大きいため、主要キャンペーンには段階的に新方式を試験実装し、影響を見極める。
仕様・指標が変わるたびに運用担当者・アナリスト・クリエイティブチームの間で認識ズレが起きやすい。
更新時には必ずナレッジ共有を。
2025年の Google キャンペーンマネージャー360(CM360)は、
単なる「広告配信ツール」から一歩進んで、より精密な“広告データ基盤” へと進化しています。
インプレッション計測方式の変更(表示の正確さを重視)
リーチ指標の強化(どれだけ多くの人に届いたかを重視)
Floodlight のWeb/App分離(より細かな効果計測へ)
は、広告運用チームだけでなく、マーケティング全体の判断基準に影響を与える大きなアップデートです。
これらの仕様変更は、いずれも「広告の透明性」と「データの信頼性」を高めるためのもの。しかし同時に、これまでのレポート数値やKPIが変化して見える可能性もあります。
したがって今のうちに、
自社のレポート設計や数値比較のルールを見直す
チームや関係部署で新仕様を共有しておく
CM360と他ツール(GA4、DV360など)の連携設定を再確認する
といった“下準備”を進めておくのが安心です。
CM360は、複雑な広告環境を整理し、データに基づいた判断を支えるツール。変化が多い時期こそ、その真価を発揮します。今後も最新情報をキャッチアップしながら、正確でムダのない広告運用を目指していきましょう。
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